ここ最近「筋膜リリース(筋膜剥がし)」という言葉を良く聞きますよね。
TVや雑誌で、アスリートや芸能人が器具で体をほぐすシーンを見たことがある人も多いのではないでしょうか?
筋膜リリースには、姿勢改善や免疫力アップなどうれしい効果が期待できます。ただし、間違ったやり方で行うと痛みが走るだけで効果が出にくいので注意が必要です。
今回の記事では、筋膜リリースの効果や、筋膜剥がしの正しいやり方について丁寧に紹介します。
自宅で簡単にできる方法なので、筋膜リリースで疲れやコリを解消してくださいね。
目次
筋膜リリースとは
まず最初に筋膜リリースとはなにか?について概念を解説します。
筋膜リリースとは、全身にくまなく広がる「筋膜」という組織に注目し、動きが鈍くなった筋膜を解放し、正常な状態へ戻す施術法のことです。
筋や骨、靭帯、腱、内臓、神経など人間の体のあらゆる組織は薄い膜で覆われています。これらを包む薄い膜である筋膜は、蜘蛛の巣のように全身に張り巡らされているため、ボディスーツと例えられることが多いです。
ボディスーツ(筋膜)がよじれると腰痛や肩こり、代謝が悪くなるなど全身に不具合が生じます。このよじれたボディスーツ(筋膜)を正常な状態に戻すための方法が筋膜リリースです。
筋膜ってそもそもなに?
筋膜リリースの概念を理解できた後に、次に疑問になるのが「筋膜ってそもそもなに?」ということではないでしょうか?ここからは筋膜の構造や働き、筋膜に異常があるとどうなってしまうのか、具体的なところを解説していきます。
筋膜の構造
筋膜とは、筋肉を包むタンパク質線維でできた伸縮性のある薄い膜のことを指します。
筋膜は、全身の細胞の核まで繋がっていることから、「第2の骨格」といわれるほど体にとって重要です。筋肉は細い「筋線維」の束から成り立っていて、筋膜はその筋線維1本1本を包み込んでいます。
筋膜は全身に張り巡らされているので、一部分でもよじれると他にも波及し、姿勢が悪くなったり、ボディラインの崩れに繋がってしまうのです。
筋膜は丈夫なコラーゲン線維と伸縮性に優れたエラスチン線維という2種類のタンパク質線維が編み上げられ、網目状のガーゼのような構造をしています。
しかし、同じ姿勢を繰り返したり、体のクセによって網目のすき間にある粘性のある水溶液の水分が失われると、この2種類のコラーゲン線維とエラスチン線維にまとわりついてよじれてしまったり、筋膜同士が癒着してしこりができてしまいます。
このしこりがコリや痛みの元となる「トリガーポイント」となります。
筋膜の働き
筋膜の働きは大きく分けて3つあります。
①姿勢の維持
筋膜は頭の先から足先まで途切れることなく全身を覆いながら、体の形や体にある組織の形を保っています。その筋膜が前後左右とバランスを保ちながら張力を発揮することで、私たちが立ったり歩いたりする時の姿勢を保てていると考えられています。 |
②力の伝達
これは姿勢の維持にも関わっていますが、筋膜には筋肉が発揮した力を伝達する働きがあります。これは筋肉が発揮した力が全身を覆っている筋膜を介して隣の腱や筋に伝わるということです。 例えば、野球でピッチャーがボールを投げるとき、足の踏み出しから体幹を通じて力が伝わり、ボールをリリースするときにボールを持った手の指先まで力が連動して伝わります。この一連の動作によって、手首だけで投げるよりもずっと速い球を投げられるようになるのです。 今までこの力の伝達は、全て脳からの命令だと考えられていましたが昨今、筋膜が大きく担っているということがわかってきました。 |
③感覚のフィードバック
筋膜の中には固有感覚受容器という感覚を脳に伝える神経が豊富に含まれています。 例えば、「痛い」「かゆい」「くすぐったい」「温かい」「伸ばされている」といった感覚センサー、皮膚の上から筋膜を介して伝わり、それが脳に認識されることで私たちはそういった感覚を感じられるのです。 |
筋膜に異常があるとどうなる?
筋膜は長時間悪い姿勢をとっていたり、間違った運動パターンを繰り返したりすることで筋膜に異常がある、いわゆる「機能異常」を起こしてしまうといわれています。機能異常とは、以下のようなものがあげられます。
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筋膜は毛糸のセーターのように網目状の構造をしていて、動きに合わせて伸び縮みする働きがあります。
例えばセーターを洗濯したら繊維が縮こまったり、よじれたりすることがありますね。他にもセーターを長時間つまんで引っ張ったままだったら、形が変わって元に戻らなくなってしまいます。
このように筋膜も網目状の組織が密集してしまう現象(筋膜の高密度化)が起き得ます。
人で例えるならば長時間ずっと猫背のまま座っていたり、頬杖をついてどちらかに偏った姿勢で作業を続けたりしていると、筋膜がアンバランスになってしまい、バランスを保っていた筋膜は伸びきった状態になってしまうのです。
高密度化した筋膜は普段よりも水分量が減り、滑りが悪くドロドロした状態になります。このような状態になると、上記にあげたような問題が何かしら生じはじめます。
このように異常をきたした筋膜をリリース(解放)して元の状態へ戻すのが筋膜リリースなのです。
筋膜リリース(筋膜剥がし)の効果
筋膜リリースを行うことで、筋膜が弾力や伸縮性を取り戻し、本来あるべき状態に戻ることで、よじれや癒着が解放され血流がよくなります。
筋膜リリースによって得られる効果は以下の通りです。
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筋肉が正しく動くようになり運動のパフォーマンスが上がる
筋膜を構成するコラーゲン線維とエラスチン線維のねじれが元に戻ると、筋膜に弾性が復活し、元々備わっていた筋力が発揮できるため、筋力の向上、柔軟性が回復し、運動のパフォーマンスが上がることが期待できます。
関節の可動域が広がって柔軟性が上がる
筋膜リリースによって固まっていた筋膜がゆるみ、血流が良くなるので、筋膜に柔軟性が蘇ります。そのため、今まで行っていたストレッチやヨガのポーズとは、あきらかに違う筋の伸びる感覚を味わえるようになります。
筋肉のコリがほぐれてコリにくくなる
筋膜リリースを行った後に肩や腰のコリが和らいだと感じたら、筋膜がリリースされたサインです。これを2週間程度続けることで筋力の向上や柔軟性の回復、運動パフォーマンスアップ等が期待でき、コリにくい体に変化していきます。
血液やリンパの流れがよくなり、冷えやむくみが起こりにくくなる
筋膜のよじれや癒着は内臓等の組織の機能を低下させ、冷えや慢性疲労といった症状を引き起こします。
また、血行やリンパの流れが滞り、老廃物が溜まるので身体がむくみやすくなります。
運動をしてもなかなか痩せないのは、このむくみもひとつの原因なのです。
筋膜リリースで本来あるべき位置に骨や内臓が戻ると、血流やリンパの流れが良くなるため、体の冷えや脚のむくみが改善します。
美容やダイエット効果も期待できる
筋肉に筋膜が癒着していると、血行が悪くなり代謝低下の原因となります。
筋膜リリースをすることで、筋肉がほぐれ血行が良くなります。その結果、基礎代謝が上がってカロリー消費が増え、脂肪がつきにくくなるのです。
基礎代謝が低下する30代や40代には、筋膜リリースで体全体の血行を促進し、基礎代謝アップさせるダイエット方法が適しています。
また、筋膜リリースによって、よじれやねじれを起こしていた筋膜が本来あるべき位置に戻るため、骨や内臓の位置も正しく戻ります。その結果、ウエストがくびれたり、顔のたるみ・シワ・むくみの改善が期待できます。
筋膜リリース(筋膜剥がし)の正しいやり方
ここからは筋膜リリースの正しいやり方をご紹介します。
筋膜リリースは、姿勢改善やコリ改善など、美容や健康に絶大な効果が期待できますが、誤ったやり方をすると、逆影響になることも。
自宅でできる正しい筋膜リリースのやり方を紹介するので、ぜひご自宅で試してみてくださいね。
腰痛予防・改善に効果的な筋膜リリース
こちらはアイテム不要、体1つでできる筋膜リリースです。
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①仰向けに寝ころび、両ひざを曲げる
②左手で右ひざ外側を持ち、両ひざを左側へ倒す(腰、背中、お尻横が伸びているかチェック)
③上からみた時にアルファベットのT字になるように両手を広げる
④目線は右手を見つめて10~30秒キープ
⑤反対側も同様に行う
猫背・肩こりの改善に効果的な筋膜リリース
次にフォームローラーを使用し、猫背、肩こりを改善する筋膜リリースです。
【やり方】
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①横向きにねて、腕をまっすぐに伸ばし、フォームローラーを脇の下に当てる
②肩の付け根から肩甲骨の外側くらいまでフォームローラーを転がす
③腕を伸ばしている方向へ前後にフォームローラーを転がす
太もも痩せ・脚痩せに効果的な筋膜リリース
太もも痩せ、脚痩せに効果がある筋膜リリースです。
痛みがあるところはじっくり時間をかけてリリースしていきましょう。
【やり方】
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①身体を横にしてローラーを太ももの横に当てる
②肩肘を曲げたまま姿勢をキープして、膝を曲げた状態でローラーを前後に動かす
③身体を回旋させながら、太ももの外側(前より)、太ももの外側(後ろより)、臀部、膝をじっくりリリースする
筋膜リリース(筋膜剥がし)についてよくある質問
ここからは、筋膜リリースについて、よく頂く質問をもとに、筋膜リリースを行う上でのポイントや注意点についてご紹介します。セルフケアを行う際の参考にしてくださいね。
一回の筋膜リリースに最適な時間はどのくらいですか?
筋膜は簡単にはリリースされません。
固有感覚受容器が応答を受けて変化するために、少なくとも30~90秒以上の機械的な刺激が必要だといわれています。1つの部位に対して普段行うようなストレッチやマッサージよりも少し長めにじっくりと圧をかけていくことが大切なポイントです。
筋膜リリースをしている部位に痛みや、伸びている感覚があるところをスタートとします。
その痛みや伸びが体に馴染むくらいまでじっくり行うと、その部位が温かくなってきて血流が良くなっている感覚が得られるでしょう。
筋膜リリースをして痛いところと痛くないところの違いは何ですか?
筋膜リリースが痛いのには理由があります。
本来、正常な体に筋膜リリースをしても痛みは全く出ません。
しかし、間違った反復運動(悪い姿勢)や、ストレスによる筋肉の緊張により筋膜がゆがんだ状態で固まると、筋膜リリースをした時に強い痛みを感じます。
筋膜リリースをして痛みがあるところは、なんらかの形で体に不具合が生じているサインなのです。
筋膜リリースはどのくらいの強さで行うべきですか?
じっくり行うというと、その痛みを我慢しながら更に体重をかけて力いっぱいやろうとする方を多く見かけます。まれにパーソナルトレーナーさんの中でもゴリゴリやっているシーンに対して「効いていますね~」と声をかけている場合があります。しかし、実はこれは少し残念な声かけなのです。
痛みを伴うようなゴリゴリとした圧をかけてしまうと、脳が過剰な刺激と判断し、筋肉や組織を縮めて固めようとします。また、自律神経のうちの交感神経が優位になってしまうため、より痛みに敏感になり、リラクセーション効果が低くなってしまう可能性があるのです。
ですので、自分がやっていて痛気持ちいいと感じる程度の強度で行うことが大切です。痛気持ちいいというのは、痛みは感じるけれど抵抗なくできる範囲のことを指します。
筋膜リリースは効果が出るのにどのくらい期間がかかりますか?
筋膜リリースの施術を受けると、しばらくの間は体がとても楽になります。
正しい知識がある人に施術をしてもらうと、1回で十分な効果を実感できるでしょう。
ただし、しばらくすると再びコリや痛みが出てきてしまいます。それは悪い姿勢や生活習慣、今までの姿勢のクセが原因です。根本的な改善に繋げるために自宅でも継続的にケアを行いましょう。短くても3カ月は筋膜リリースを継続することをおすすめします。
筋膜リリースとストレッチは何が違いますか?
筋膜リリースとストレッチは、そもそもの目的や効果が異なります。
▪️ストレッチ
目的:筋肉自体を伸ばす 効果:柔軟性の向上・血行促進・疲労回復 |
▪️筋膜リリース
目的:筋膜の中にある筋肉が動きやすいようほぐす 効果:可動域の改善・筋膜を正しい位置に戻す |
ストレッチと筋膜リリースは効果が違うため、一緒にやるよりは別々で行った方が効果的です。
順番は筋膜リリース→ストレッチで行うほうが良いでしょう。
筋膜リリースにはどのアイテムを使えば良いですか?
以前は筋膜リリースといえばフォームローラーといわれていましたが、最近では筋膜リリース用アイテムがたくさん出回っています。アイテムにはそれぞれメリット・デメリットがあるので、自分が使いやすいもの、長く続けやすいものを選んで行うことをおすすめします。
いくつか例にあげてみます。
◆フォームローラー(振動無)
自分の体重をかけながら体をコントロールして行うことが必要です。筋膜リリースしたい場所によっては自分で体を支えながら行うこともあります。最初は難しく感じたり、コツをつかむまでは大変かもしれませんが、筋膜リリースを行いながら自分の体を支えるエクササイズだと思って挑戦してみてください。ご自身の体を支えることに不安のある方や中高齢者の方、障がいのある方には部位によって使い方が難しい部分があるでしょう。 |
◆フォームローラー(振動有)
筋膜は圧に振動やストレッチを加えることで効果的に筋膜リリースすることが期待できます。振動するものを使うことで「圧+振動」による筋膜リリースを行えるため、効率良いですし、開放感も得られやすいでしょう。振動の調節ができるものが多く販売されていますのでお好みの振動を調節するのが良いでしょう。 |
◆ローラースティック
自分の手を使ってふくらはぎや太ももを行うため、圧の調節がしやすくどなたでも使いやすいでしょう。体力に自身のない方や中高齢者の方でも比較的扱いやすいアイテムです。デメリットとすれば手が届かない所はリリースできないので自分が筋膜リリースしたい部位がどこなのかによって検討するのが良いでしょう。 |
◆マッサージボール(振動有)の場合
こちらも振動するアイテムですが、ボール型のため扱いやすいでしょう。仰向けでもうつ伏せでも、首・肩甲骨・腰横・お尻・足裏と部位も選ばずにアプローチすることができます。持ち運びも良いですしリリースしやすいと感じる方が多いでしょう。上記のものもそうですが、振動があるものは振動音や充電が必要なことがあるのでそれも踏まえて検討するのが良いでしょう。 |
メリット・デメリット・価格一覧は下記の通りです。
商品名 | サイズ | メリット | デメリット | 価格 |
フォーム ローラー |
ロング | ・全身使用可能
・壊れにくい ・トレーニングでも使用可 |
・かさばる | 8,000~9,000円程度 |
ショート
(振動無) |
・壊れにくい
・持ち運べるサイズ |
・部分的なリリースしかできない
・体の動かし方が難しい |
3,000~4,000円程度 | |
ショート
(振動有) |
・振動によりリリースしやすい
・痛み少ない |
・振動音が響く
・充電が必要 |
10,000円前後 | |
ストレッチ用ポール | ロング | ・全身使用可能 | ・ポールの質が柔らかい
・廃れやすい |
3,000~6,000円前後 |
マッサージボール | ソフトボール程度
(振動無) |
・ピンポイントで使用可能 | ・一部分にしか使用できない | 2,000~3,000円前後 |
ソフトボール程度
(振動有) |
・振動によりリリースしやすい
・痛み少ない |
・振動音が響く
・充電が必要 |
10,000円前後 | |
ローラー
スティック |
ショート | ・手軽に使用できる | ・手が届かないところには使えない | 2,000円前後 |
身体の不調は筋膜リリースで改善しよう!
今回は筋膜リリースの効果と自宅でできる人気の筋膜リリースについてご紹介しました。
セルフケアでも解決しない場合は、専門知識を持つトレーナーに身体の不調に合わせた筋膜リリース方法を教えてもらうことをおすすめします。
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