何度も繰り返す腰痛。
その改善に筋トレが役立つ場合があると言われていますが、これは事実です!
けれども、かかりつけの整形外科や整体院で、「筋トレをして背筋を鍛えましょう」と言われても、正直何をすればいいのかわからない…。
流行りのスクワットで太ももを鍛えようとしたけれど、かえって痛みが増した気がする…。
そんなお悩みをお持ちの方が多いのが現実。
それなら腰痛のメカニズムを理解したうえで、痛みを取る筋トレをマスターしましょう。
1.腰痛の代表的な原因とは?
腰痛の原因は大きく3つに分けられます。
- 本態性腰痛
- 症候性腰痛
- 心因性腰痛
医学的にも原因がわからない腰痛。医師もやれることがなく、病院にかかっても「温めましょうか」「ゆるめましょうね」「鎮痛剤出しておきますか」といったような、お決まりの処置で済まされてしまう状態。
疾患名が明確につく腰痛。レントゲンなどを見て、明らかな病変(脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなど)が見受けられる状態。
まれに内臓疾患がある場合もあり、いずれの場合も治療によって痛みを軽減することが可能です。
精神的なストレスによる腰痛。
ほか、以下のようなことが腰痛の原因になっていることもありますが、いずれも筋トレが原因の解消に役立つ可能性があります。
1-1.運動不足や筋肉の衰え
デスクワークや車移動が多く運動不足になりがちな現代人にとって、筋肉の衰えは深刻です。「内臓疾患があるわけでも、ストレスがあるわけでもない。レントゲンにも異常がなかった。なのに腰が痛い。」というケースが、実に腰痛全体の80%を占めています。
日常生活の中で気軽にできる筋トレを積極的に取り入れることは、時間や場所の確保が難しい人に最適な腰痛予防になります。
1-2.無理な負担がかかった
重いものを持つ時は「手だけで持たないで、膝を曲げ、腰を落として足で持つように」という話を聞いたことはありませんか。体の使い方が間違っていると、思わぬ腰痛を引き起こす原因になります。筋トレをすると、体の癖、動かし方の癖も知ることができます。それも筋トレのメリットと考えて良いでしょう。
1-3.女性は月経時に腰痛になることも
ここまでで述べてきたような痛みとは少し違うのが月経時の腰痛。腰回りのだるさが主な痛みです。月経にはさまざまなホルモンが関係しますが、なかでも月経周期に関係するエストロゲンやプロゲステロンの働きはよく知られています。
痛みは子宮が収縮する時に起こり、その作用はプロスタグランジンというホルモン物質の影響であることがわかっています。また、プロスタグランジンは子宮だけでなく、腰にまでその作用が及ぶことがあると考えられているのです。
プロスタグランジンによる血管収縮により、女性に多い冷えの症状が増幅し、腰の痛みが強くなっている可能性もあります。それを考えると、筋トレやストレッチを日常的に行うことは、血行をよくして、冷えない体を作る対策にもなるので、メリットしかありません。
2.腰痛の症状
前述した、医学的に原因不明な本態性腰痛の場合、主に以下2つの動作をしたときに症状が出ることが多々あります。
- 前屈した時に痛い
- 後屈した時に痛い
前屈をすると太ももの裏が痛くてほとんど曲げられない。また、椅子から立ち上がる時やジャンプした時に痛みを感じる場合。
これは骨盤が後傾している証拠です。坐骨から始まり、膝関節をまたいぎ下腿についている筋肉、いわゆるハムストリングスが張っていることが考えられます。また、腹部の筋肉が張っている場合も骨盤は後傾します。
1.とは反対に、後屈した時に痛みがある、また、立った状態から座る時に痛みを感じる場合。これは骨盤が前傾していて、上半身の背面と下半身の全面の筋肉が張っていることが考えられます。
3.筋トレが腰痛改善に効果的なワケ
それでは、なぜ筋トレが腰痛に有効なのか詳しくみていきましょう。
3-1.痛み=こわばり+弱化
痛みというのは、筋肉のこわばりと弱化がセットになった時に発現します。弱化は背中やお腹の筋肉だけでなく、股関節や膝関節にも見受けられることがあります。
こわばりに対しては、ストレッチや筋膜リリースでほぐしたり、人にほぐしてもらったりすると緩みますが、弱化に対してはどうでしょうか。鍛えるしかありません。
そこで、前述した腰痛の症状から原因を探ります。
例えば、猫背で骨盤が後傾している人の腰痛の場合。太ももの後ろがこわばっているのでそれをほぐすのはもちろんのこと、骨盤を前傾させるための腸腰筋や脊柱起立筋を鍛える必要があると考えられます。反り腰で骨盤が前傾している人の腰痛に対しては、この反対のことをすればいいのです。
3-2.腰まわりだけをほぐすのではない
腰痛があり、何かしらのマッサージを施してもらう場合、多くの施術者が腰まわりだけを触ることはありません。理由は腰痛の原因が腰だけにあるわけではないからです。もし、腰だけを施術しておしまいという施術者がいたら、そこには通わないことをおすすめします。
多くの施術者が、腰痛を繰り返さないためにも筋トレの必要性を説くはずですが、「体を鍛えたら全体の痛みに強くなりますよ」というような、ざっくりとしたことではないのです。それではなんの問題解決にもなりません。
筋トレは、プラスマイナスの作用です。後ろを緩めて、前を鍛える。前を緩めて、後ろを鍛える。どちらか一方を緩めるだけ、鍛えるだけではいけません。「正しいポジションを作る筋力がない」ことを理解し、それは具体的にどの筋肉の力がないのか知ることで腰痛を改善することができるのです。
つまり、筋トレとは、正しい骨格バランスを維持することができる筋力をつけること。筋バランスを整え、弱化に対して最適な対処をすることなのです。
筋トレが腰痛改善に効果的であることがおわかりいただけたでしょうか。腰痛の症状から原因を明確にした上で筋トレすることで、「疲れた時にだけ腰が痛い」とか「慢性的に腰が痛い」ということはなくなっていくでしょう。
4.【腰痛ケア】プロが教えるオススメの筋トレメニュー
腰痛の症状別にオススメのエクササイズを紹介します。ポジションが良くなり、筋力がつくだけでなく、張っている筋肉も柔らかくなります。
4-1.下半身の前面を鍛えるニーアップ
前屈した時に腰が痛い人にオススメエクササイズ。
原因:骨盤後傾、ハムストリングスと腹部の張り
- 立った状態で交互にまっすぐ膝を上げる
このとき、上げた足と反対の手のひらで膝をポンと叩くとリズムよくできます。
できるだけ高く、後ろにのけぞらない。つま先もしっかり上げましょう。
4-2.背筋(脊柱起立筋)を鍛えるバックアーチ
後屈した時に腰が痛い人にオススメエクササイズ。
原因:骨盤前傾、太ももの前、背筋の張り
- 骨盤底筋群に力を入れ、骨盤の深部を固める
- お尻(大殿筋)にグッと力を入れる
- 足を閉じながら、足を持ち上げる
- 上体を起こし、肩甲骨を寄せる
- 腕を手の親指同士を付ける感覚でひねり上げる
- お尻の力を完全に抜いたら、静かに上半身を下ろす
(放尿感覚ほどの脱力から、止める感覚の力の入れ方)
注:この時、顎を上げすぎず、意識はお腹。お腹で地面を押していくイメージ
一般的には背中を意識するというが、それでは腰が痛くなってしまいます。あくまでも意識はお腹に向けましょう。これを繰り返します。
4-3.ハムストリングスを鍛えるヒップリフト
- 仰向けで横になり、両膝を立てる
- 骨盤を後傾にして、お尻を上げる
- 静かに下ろす(10回繰り返す)
注:この時、脛から足首が90°になるように。一般的には、膝を90°とするが、それではつま先が遠すぎる。
注:この時、息を吐きながら、目線は足元方向遠くに
4-4.腹筋を鍛えるクランチ
- 仰向けに横になり、手のひらを床につける
- 骨盤を後傾にし、後頭部を上げる
- 息を吐きながら、お腹を丸めるように起あがる
- ゆっくり下ろし、後頭部が付く前に再び起あがる
注:この時、脛から足首が90°になるように。
注:この時、足の中指は移動するはず
【まとめ】
弱化に対する筋トレ。これが腰痛改善のためのキーワードとなることは間違いありません。
効果的な筋トレをするためには、今、体がどういう筋バランスにあるのか、また、骨がどういう位置にあるのかを正しく把握する必要があります。
もしかしたら「そんなことは知っている」と思った人がいるかもしれません。けれども、健康行動のトリックに引っかかっていませんか?
「なんとなく良いとわかっているけれどできない」「悪いとわかっているけれどやめられない」。
そんな人は、実は「何もわかっていない」のです。
知っている、聞いたことがあるという世界にとどまって、知識を得たことでちょっと気分がいいだけで終わっているはずです。そこで止まっていては、いつまでたっても自身の健康を守れません。
一方、理解して、実際に実行している人は別世界へ進み、幸せな未来が見えてきます。一生持続する、継続性のある運動を実行することは、腰痛予防、ひいては健康寿命を伸ばすことにもつながるのです。
自分ひとりでは症状に合った効果的な筋トレをできる自信がないという人はプロの力を借りることも一つの手です。
何もしなければ筋力は衰えていく一方です。
幸せな未来にするための第一歩として、まずはプロに相談しませんか?